農業へのリモートセンシングの貢献
ひさしぶりに研究に関係する内容で更新する。
ついでにこういう内容で更新してみようかなと思ったのは,
昨日映画館でみた”キングコング”に影響を受けたから。
映画の時代背景は,1973年でアメリカがベトナムから撤退を決めたところ。
”LANDSAT”がとらえた衛星画像で未知の島が見つかるという流れ。
その後も何度も何度もLANDSATはでてきて,僕は一人で興奮していたわけだが,
他の人にとってはなんのことかもわからなかったかもしれない。
その島に大義名分では,資源探査に行くというところから映画は始まる。
話を本題に戻すが,”農業リモートセンシング”に関わる文献をレビューしていて,時代ごとにどんな研究があるのかに着目して見ていると面白い。
これをちゃんと書いていると総説になってしまうので,かなり簡略して書きます。
農業リモートセンシングの王道:農地のマッピング
⇒いつ,どこに,どれだけの面積農地があるのか。
まさに,王道で「統治」のための研究。
現在は,いかにマッピングを自動化するのか?が大きなテーマなのかなと。
ただし,マッピングだけでは「農地面積」しかわからない。
これを「生産量」とつなげたいのだ。
ここで新たな動向:収量推定
⇒単位面積あたりどれくらいとれるのか。
これを組み合わせることでその地域の生産量がわかり,本当に統治する側に必要なデータとなる。
また,ここで見えてくるのが,如何に衛星だけで収量を推定するのか,という流れ。
一昔前は,衛星の回帰日数は今よりもずっと長く,十数日に一回の画像だけでどうするのか。
その方法に重点が置かれている印象を受ける。
LANDSATの画像一枚が今ではとんでもない値段だった時代。
1枚の画像からすべてをやりたくなる気持ちもわかる。
農学などで培われてきた日射量と収量の関係(光合成)にも考察では触れられているが,不十分じゃないか?と思うが,これも現在と違ってデータリッチではなかったことが窺い知れる。
ではリモセンデータに収量の関係はどういう解釈になったのか?
植生指数でバイオマスが評価できる。
また,植生指数と光合成有効放射吸収量には相関があり,植生指数から光合成有効放射吸収量を推定できる。
よって,植生指数から収量が推定できている。
という解釈となった。
ここで,冷静に考えてみるとわかるが,実際はどれだけ日射を浴びたのかという「積算値」が重要になるわけだが,それを十数日に一回の観測で評価するのは至難の業である。
ただ,単年度,1地域では植生指数と収量のみできれいな相関がでる(場合がある)。
なぜか?
その地域では,おおよそ農事暦も同じで,生育期間中の日射条件はほぼ同じになるから。
よって,植生指数の大小はバイオマス・クロロフィル含有量の大小を評価し,光合成の大小を評価することで収量の大小が間接的に再現できているということになる。
するとどうなるか。これらの「収量推定モデル」は地域に依存するわけである。
それでも問題ないのだが,普遍性を探求するという姿勢がそれを良しとはしていない。
何が足らないのか?前述の通り,「積算」が欠けている要素である。
現在は,気象観測点も多数あり,日単位の衛星推定日射量もある。
もっと言えば,静止衛星ひまわりから推定されたさらに時間分解能の高い日射量もある。
あとは如何にこれらのデータをハンドリングするか。
そして如何に組み合わせるか。
そのアイデアと方法を考える。
この時代になるべきだと思う。
ここで,農業へのリモートセンシングの貢献に話を戻すが,
これまでの貢献は,いつ,どこに,どれだけの面積農地があるのかというマッピングが主な貢献だと思う。
統治するための情報を与えるという点での貢献は小さくない。
一方,現状,農家でも特に家族経営などの農家には貢献は皆無であろう。
実際,農家はリモセンが役に立っていますなんて感じていないはず。
本当に家族経営規模の農家の農業にもリモセンを活用するためには?
利用する人,目的,スケールにあわせたリモセンの使い分けを考えると,UAVリモートセンシングの方向性は,この家族経営規模に即したものが望ましいと思われる。
本当にリモセンが農業に貢献している・役立つと感じてもらうには,やはり現場で使えないと意味がないのではないか。
われわれ個人が認識できる世界は思っているよりも小さいのではないか。
地域の課題に対応していかないことには,大きな課題の解決にも繋がると思えない。